専門家(企画制作会社)に聞いたり、他社の社史を見て勉強したりします。
上司からの指示は、おおよそ抽象的なものです。目的だけを明確に与えて方法論は担当者に任せたほうが、全体として能率的だからです。
社史編纂も同じで、経営層から指示が与えられたら、一人で抱え込んでしまわずに、制作会社などの専門家に持ち込むのが最も早道です。社史制作の経験があるスタッフのいる制作会社ならば社史編纂に向けた具体的な方法論を提案することができるはずです。
その際に、企画立案に必要な5W+3Hを十分に論議して的確に相手に投げかければ、きっと期待以上の答えが返ってくることでしょう。「5W+3H」はさほど難しいものではありません。皆さんが日常業務のなかで新しい事業に取り組まれるときも、おそらく同じ方法をもちいておられるのではないでしょうか?外部の専門家に委嘱しない場合でも、5W+3Hの考え方はたいへん有利です。
ほとんどの場合、担当者は兼任です。
社史編纂の作業は質・量ともに膨大ですから、専任の担当者がいるにこしたことはありません。しかし実際には、専任担当者をおいて社史編纂に取り組んでいるのは、ほとんどの場合、大手企業です。常設の資料室や社史編纂質があればそのメンバーが、数年ごしのプロジェクトを組むのであれば選抜された数人のチームがこれにあたります。それらの例を除けば、第一線を退いた嘱託や顧問の方に編纂事務局のリーダーを委嘱する場合に限られます。
大多数の企業では兼任スタッフで作業を進めざるを得ないのが実態だといってよいでしょう。ですから、兼任だから質的に劣るものしかできないのでは、という懸念を抱く必要はありません。要はやり方次第で、兼任ならば兼任でできうる環境づくり、体制づくりをすればよいのです。
OBは最有力の情報源。さらに業界団体、地方自治体なども。
古い資料の出所として、OBは欠かせません。技術開発史などにまつわる貴重な証言や資料が出ることも多いので、ぜひ資料提供の依頼をしておきたいものです。その際、社内と同じように文書で依頼したほうがよいでしょう。また、OB会が開かれることがあるならそれを視野に入れた依頼の仕方がありましょうし、社史編纂を機会にOB会を開く、そこで何らかの情報収集をねらうといった方法もあるでしょう。OBご自身がなくなっているときでも、家族にお聞きしたりすることもできますから、何らかの情報が期待できます。
これは一般的な方法ではありませんが、とくにOBの世代で、几帳面な方が自身の覚えとして日誌をつけていることがあります。要職にあった方の日誌ならば、仔細に点検してもらうと、かなり多くの出来事が拾えます。当社で制作をさせていただいたお客様で、20年分の日誌をもとに年表台帳をつくられたところがありましたが、たいへん能率的でした。
また得意先や取引先に資料提供をお願いすることもできます。あらかじめどのような資料がほしいのか具体的に依頼したほうが先方も協力しやすいでしょう。
簡潔明瞭を心がけるのがよいでしょう。
本文は最初から最後まで同じ調子で書き進めていくのが原則です。そのためには、複数の担当者で手分けして原稿を書くのか一人で書くのかにかかわらず、「原稿執筆要領書」などで文章の調子についてあらかじめ原則を取り決めておきます。
その内容は、たとえば漢字とひらがなの使い分け(「行う」と漢字で書くか、「おこなう」とひらがなで書くのか)、洋数字・漢数字の使い分け、単位の表記の仕方をどうするかなどを列記したものです。こういった表記が混在しているとたいへん読みにくくなります。「用字用語の手引き」「記者ハンドブック」などといった辞典が販売されているので、それを参考にして基準をつくるとよいでしょう。
社史は会社の“らしさ”(個性)を表すものでもあります。平易であることを強調すると無個性になるのではないかと心配になる方もあるかもしれませんが、そんなことはありません。いくら平易明瞭を心がけても、どうしても書き手や発行者(会社)の個性は文章に表れてくるものです。
英文原稿・英文編集はプロに手伝ってもらいましょう。
海外用の社史・記念誌を制作する場合、日本語の原稿が完成した段階で英語に翻訳するのが一般的です。しかしそれだけではありません。一般的な社史制作に加えて、編集制作の過程で気をつけるべきポイントがたくさんあります。たとえば、発刊のねらいや対象読者・地域に合わせた英文作成、海外で不適切な表現がないかのチェック、英語書籍として通用するデザイン調整などです。自社に英語が堪能な方がいるとしても、そこまで目配りした作業をすることはなかなか難しいと思われます。
したがって、英語版社史の実績や英文編集のノウハウがある社史制作会社とよく相談されることをおすすめします。外国語専門の編集担当者がついてくれるところであればなおよいでしょう。料金だけで決めてしまった結果、後でチェックや修正に予想外の手間と費用がかかってしまったという例もありますので注意が必要です。
社史・記念誌は今後末永く残る大切な出版物であり、まして英語版は自社の理念やDNAを世界に発信するという重要な役割があります。なるべくスケジュールと予算に余裕を持たせた上で、信頼の置けるパートナーと連携しながら丁寧に作っていきたいものです。
ある日突然、「社史を担当してくれ」と言われた!「社史を作っても、果たして読んでもらえるのだろうか?」「万一、誤植(ミス)が出たときはどう対処するべきか?」など、社史編纂に奮闘中の方、これから編纂担当になる方、担当になる可能性のある方など、社史に関わるすべての方必携のQ&A方式実務ガイドブックです。